自己破産特有のデメリット
第0 目次
第2 過払金関係のデメリット
第3 法令上の資格制限等
第4 欠格事由としての警備員の意義,及び警備業務
第5 破産手続開始決定と取締役たる地位
第6 破産者名簿及び身分証明書
第1 自宅関係のデメリット
0 「自己破産又は個人再生のデメリット」も参照して下さい。
1 自己破産の場合,自己所有の土地建物は,自宅を含めてすべて手放す必要があります。
自由財産拡張の手続(破産法34条4項)を利用したとしても,親族が時価相当額で自宅を買い取ってくれた上で無償又は有償で貸してくれるといった特段の事情がない限り,自宅を手元に残すことは絶対に無理です。
2 破産手続開始の申立てをした後に自宅を手放す場合,破産管財人が破産裁判所の許可を得て任意売却(破産法78条1項1号)し,又は強制執行の手続(破産法184条1項)により自宅の土地建物を売却することになります。
この場合,任意売却でも自宅の売買代金から引越代を出してもらえることはまずありませんし,破産者の対応が悪質な場合,売却前であっても破産法155条1項に基づく封印をされたり,破産法156条1項に基づく引渡命令の対象となったりします。
そのため,できれば破産手続開始の申立てをする前に,自宅の土地建物を任意売却することで引越代を出してもらった方がいいです。
ただし,債権者が自宅について民事保全法に基づき不動産の仮差押えをしてきた場合,破産管財人でない限り,事実上,任意売却はできなくなります(破産手続開始決定に伴う仮差押えの失効につき破産法42条1項)。
3 破産者が個人である場合,自己所有の土地建物について,破産手続開始の登記がなされることがあります(破産法258条1項2号,破産規則79条,破産法の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(平成16年12月16日付の法務省民事局長通達)参照)。
ただし,個人の破産財団に属する権利に係る破産手続開始の登記は,管理処分権が破産管財人に専属するに至ったことを示す警告的な登記に過ぎない上,例えば,当該登記がなくても破産財団に属する不動産について破産管財人が所有権移転登記をすることができるなど,通常,管財業務に支障が生じないことから,実際に破産手続開始の登記がされることはほぼありません。
第2 過払金関係のデメリット
1 自己破産をする場合であっても過払金がある限り,破産手続開始の申立てより前に過払金を回収します。
2 破産者が手元に残すことのできる過払金は,以下の①ないし⑨といった,いわゆる「有用の資」を控除した後の額として20万円に限られています。
① 申立費用
→ 破産申立てのための弁護士報酬及び実費のことです。
② 破産予納金
→ 同時廃止の場合,10,584円です。
管財事件の場合,裁判所に対するものが13,834円であり,破産管財人に対するものが205,000円であり,合計で218,834円です。
③ 過払金返還請求に係る弁護士費用
④ 水道光熱費等の生活費(破産法98条・民法310条参照)
→ ちなみに,民法310条は法人については適用がありません(最高裁昭和46年10月21日判決)。
⑤ 医療費
⑥ 転居費用
⑦ 葬儀費用(破産法98条・民法309条参照)
⑧ 学費
⑨ 住民税・国民健康保険料等の公租公課
そして,いわゆる「有用の資」を控除した後の過払金の額が20万円を超えた場合,破産管財人を選任してもらった上で自由財産拡張の手続(破産法34条4項)をとらない限り,全額が没収されて債権者に返済させられることとなります。
第3 法令上の資格制限等
2 破産手続開始決定を受けた場合,民法に基づき以下の地位を失います。
3 免責許可決定が確定した時点で法令上の資格制限は消滅する(当然復権。破産法255条1項1号)のであって,7年間も待つ必要はありません(免責許可決定が出てから約1ヶ月後に確定します。)。
4 例えば,以下の職業については,破産手続開始決定に基づく法令上の資格制限はありません。
5 個人再生の場合,法令上の資格制限の問題が発生することは一切ありません。
第4 欠格事由としての警備員の意義,及び警備業務
(1) 警備業者は,破産者を警備業務に従事させてはなりません(警備業法14条2項)。
2 警備業務
第5 破産手続開始決定と取締役たる地位
2 取締役たる者が破産手続開始決定を受けた場合,いったんは取締役の地位を失う(会社法330条・329条1項・民法653条2号)ものの,破産手続開始決定を受けたことは取締役の欠格事由とはされていません(会社法331条1項には,平成17年7月26日法律第87号による削除前の商法254条ノ2第1項2号に相当する条文がない。)。
第6 破産者名簿及び身分証明書
(2) 大阪府摂津市HPに「身分証明書(後見・破産・禁治産及び準禁治産に関する証明)」が載っています。
2 「戸籍事務司掌者に対する破産手続開始決定確定等の通知について」(平成16年11月30日付の最高裁判所民事局長通達)に基づき,免責不許可決定が確定したときなど,免責許可決定がされないことが確定したような場合でない限り,裁判所から本籍地市区町村役場への破産手続開始決定の通知はなされなくなりました。
2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。