自己破産で弁護士に説明すべき事項
第0 目次
第2 相続又は退職の予定の申告
第3 免責不許可事由の申告
第4 すべての財産の申告等
第1 すべての債権者の申告
1 任意整理の場合以上にすべての債権者を必ず申告して下さい。
自己破産又は個人再生の場合,①親戚なり勤務先なりといった特定の債権者に対してのみ返済を続けることは絶対にできません(破産法252条1項3号所定の免責不許可事由となります。)し,②特定の債権者を除外して破産申立てなり個人再生の申立てなりを行うことは絶対にできません(特定の債権者を除外した場合,破産法252条1項7号所定の免責不許可事由となります。)。
2 NHK(=日本放送協会)との放送受信契約(放送法32条1項参照)の締結は日常家事債務(民法761条)に当たりますから,NHKの放送受信料は夫婦の連帯債務となります(東京高裁平成22年6月29日判決及び札幌高裁平成22年11月5日判決,並びにこれらの判決に対する上告を棄却した最高裁平成23年5月31日決定)。
また,日本放送協会放送受信規約4条1項及び5条によれば,テレビを設置した時点で放送受信契約が成立し,放送受信料支払義務が発生するとされています。
よって,自宅にテレビが置いてある限り,夫婦の破産手続との関係では,NHKを債権者として扱った上でNHKの放送受信料を免責してもらった方が無難です。
3 未成年者が責任能力を有する場合(=原則として,子どもが中学生以上の場合)であっても,その監督義務者に監督義務違反があり,これと未成年者の不法行為によって生じた損害との間に相当因果関係を認め得るときには,監督義務者は,民法709条に基づき損害賠償責任を負います(最高裁平成18年2月24日判決。なお,先例として,最高裁昭和49年3月22日判決)。
そのため,子どもの行為に起因する損害賠償債務がある場合,必ず申告して下さい。
4 裁判所に対し,自己破産又は個人再生の申立てをする前であれば,債権者を追加することができますから,後日,受任弁護士に伝えていない債権者が見つかった場合,直ちに受任弁護士にご連絡下さい。
また,自己破産の場合,真にやむを得ない事由があれば,破産手続開始決定が出た後であっても,債権者を追加することができます(破産法248条3項ただし書参照)から,破産手続開始決定後に債権者名簿に記載されていない債権者が見つかった場合,直ちに受任弁護士にご連絡下さい。
5 破産者とは完全に生計を別にする親族の協力を得られる場合,どうしても返済したい債権者に対する債権に限り,当該親族が債権者から債権譲渡を受けるという名目で,事実上の立替払いをすることは可能です。
この場合,立替払いをした当該親族を債権者名簿に記載することとなります。
6 管財事件の場合,破産手続開始決定が発令されてから破産手続が終了するまでの間,郵便物は全部,破産管財人に転送されます(破産法81条)。
そのため,例えば,分割払いで購入した携帯電話機の代金については,毎月の電話代の請求書の明細を見ればその存在が分かるわけですから,この場合,携帯電話会社を破産債権者として申告しないことで携帯電話機の代金の支払を継続することは絶対に無理です。
第2 相続又は退職の予定の申告
1 相続の予定の場合
(1) 近日中に相続により財産を取得する可能性がある場合,必ずその旨を申告して下さい。
なぜなら,破産手続開始決定又は再生手続開始決定までに相続が発生した場合,相続により取得した財産を債権者に分配する必要が出てくる(破産法34条1項,民事再生法124条1項参照)ため,相続が発生する前には破産手続開始決定又は再生手続開始決定を取得できるように,申立ての準備を急ぐ必要があるからです。
(2) 両親が死亡した後に子どものいない兄弟姉妹が死亡した場合,死亡した兄弟姉妹の配偶者の他,生存している残りの兄弟も相続人となります(民法889条1項2号)から,このようなタイプの相続も忘れずに申告して下さい。
(3) 近日中に相続が発生する場合において,死亡する可能性がある人に判断能力が残っている場合,全財産を破産予定の相続人「以外の」相続人に相続させる旨の遺言書を作成することが有益である可能性があります。
つまり,遺留分減殺請求権は一身専属権である点で破産管財人の管理処分権が及ばない(最高裁平成13年11月22日判決参照)ため,破産法34条2項及び34条3項2号ただし書との関係で破産手続が継続している間は遺留分減殺請求権(消滅時効は1年であることにつき民法1042条前段)を行使しないものの,異時廃止決定又は破産手続終結決定が発令された後に,他の相続人と話し合いをする余地があるということです(最高裁昭和58年10月6日判決参照)(この手法が法的に通用するかどうかの断言はできません)。
2 退職の予定の場合
近日中に退職により退職金を取得する可能性がある場合,必ずその旨を申告して下さい。
なぜなら,①在職中の場合,退職金の支給見込額の8分の1だけを破産財団に組み入れるだけで足りる(将来の請求権が破産財団に含まれることにつき破産法34条2項)のに対し,②退職してから退職金を受給するまでの間であれば退職金の支給見込額の4分の1(民事執行法152条2項参照)を破産財団に組み入れる必要がありますし,③退職金を取得した後であれば退職金の全額を破産財団に組み入れる必要がある(最高裁平成2年7月19日判決)からです。
第3 免責不許可事由の申告
2 破産法252条1項6号の業務及び財産の状況に関する帳簿には,直ちにプリントアウトできることなどによって,可視性,可読性が確保されている限り,電子データによるものも含まれると解されます(旧破産法374条3号の「商業帳簿」の意義に関する最高裁平成14年1月22日判決参照)。
第4 すべての財産の申告等
2 予約がある場合の相談時間は平日の午後2時から午後8時までですが,事務局の残業にならないようにするために問い合わせの電話は午後7時30分までにしてほしいですし,私が自分で電話に出るのは午後6時頃までです。